タバコ、ライター、パイプ、葉巻…タバコやタバコ周りのアイテムには、男のダンディズムを象徴するものが多いですね。
これが禁煙とともになくなってしまったことは、男としてのアイデンティティが失われたようなものです。
タバコ自体が、どんなブランドを喫っているかでアイデンティティとなったものでした。
例えば、会議の際にショートピースの紺色の缶を持ち歩いている男、そもそも、ショートピースというのは、両切りといったフィルターのない強いタバコでした。
これは50本がひとつの缶に入っているもので、この缶を持ち歩いている男は、強い男、男っぽい男としてのアイデンティティになった訳です。
また、ダビドフなんていう外国タバコも個性的な男としての演出ができました。
一方ライターは、時計と並んで、男の持ち物としては、皆が競い合ったものでした。
まず、粋な男の持ち物としてはジッポー、当時ガスライター主流の中で、オイルライターを貫いており、風にも強くゴルフ場で使いやすいということで流行ったものです。
さらには、様々なブランド・ライター、ダンヒル、デュポン、カルティエなど、タバコ以上にアイデンティティが強調できるアイテムでした。
多くの人が、通常は百円ライターを使っていたのですが、ブランド・ライターは“勝負ライター”として皆ポケットに忍ばせていたものでした。
さらにタバコ関連では、パイプと葉巻です。
パイプは通常、“えらそうな人が使う”ということで、会社の会長、大学教授、小説家、評論家、医者、弁護士なんて方々が喜んでお使いになっていた。
葉巻はさらにステイタスが上で、海外生活の長い富裕層の方々、また葉巻は一過言もった個性の強い人、葉巻というのは匂いが強く、香りを楽しむもので、ジガーバーという専用酒場で愛好家たちが集まって楽しんだりするもので、これも強いアイデンティティを訴えるツールになっています。
このように、男たちは、タバコを中心にその周辺アイテムで、自分のダンディズムを表現し、アイデンティティを形づくってきたものでしたが、禁煙の流れで、こうした自己表現がほとんでできなくなってきています。
今や男たちがダンディズムを表現できるアイテムは、時計、香水、ブレスレッド等のアクセサリーなどですが、タバコやタバコ周りアイテムとしての広がりに欠けるため、ダンディズムという言葉さえ陰を潜めてきています。
禁煙をきっかけに、男たちはダンディズムを忘れてしまった。それに伴って確かなアイデンティティも失ってしまった。
これは、禁煙のデメリットとしては最大のものと言えるのではないでしょうか?